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町田康/浄土

「犬死」「どぶさらえ」「あぱぱ踊り」「本音街」「ギャオスの話」「一言主の神」「 自分の群像」の七編を収録。

頭ん中で「考えてること」を「言葉」に還元出来ない〜!って感覚は、程度の差こそあれど誰しもが抱いたことがあるはずで、その辺の才に秀でているからこその"作家"業なんであるが、こと「自意識」に関する領域で、普段もやもやと頭に渦巻いている感覚を言語として表出させるという点で、町田康の異能は図抜けている。

「犬死」は、相対的に見て結構"酷い"状況に置かれている独りの男が、思考/行動のちょっとした誤選択から加速度的に破滅へと向かって雪崩れ落ちていくという、著者他作の多くに見られる笑うに笑えない物語。展開としてはハナから破綻しており、いわばカオス。物語としての起承転結を求めて見てもたぶん何も見つからない。要は男の一挙手一投足、その『笑うに笑えない』描写が作品の全て。なんでそうなっちゃうの?という、普通に考えれば回避するだろう酷い思考/行動パターンを採る「私」の一人称描写は、しかし実際に自分が同じシチュエーションに陥った場合にはそうしない!とは言い切れない、認めたくない自己同一性(ん?日本語変?)を覚えさせられる。即ち己の無力・無能さを。そしてその行動を規定してるのが"自意識"なんだよね。だから笑うに笑えない。町内会の集まりで独り汚ったないドブを浚えることになり、最終的に"ビバ!カッパ!"を連呼するしかなくなった人物が描かれる『どぶさらえ』は、そうした基本フレームにこれまでに無くビートの効いたフレーズが撃ち込まれ、PUNKというよりFUNKなリズムを醸成する新局面を展開してみせる。これ最高。理解不能なキャラクターの出現によって、登場人物とともに読み手のこっちまで漠然とした不安に追い込まれていく『あぱぱ踊り』では、わりと初期の町田康に戻る。一方で『ギャオスの話』『一言主の神』あたりは、言語を駆使したSFテイストの捏造もので、たぶん「町田作品が苦手〜」って人が読んでもある程度楽しめるだろう、ある意味"らしからぬ"作風。筒井康隆とか佐藤哲也の世界にもリンクしてる。『本音街』もどっちかというとこちら寄りの作風。なんで俺だけがッ!?という理不尽さが横溢する『自分の群像』は、だけど破滅に向かっての暴走という従来の枠組みが見当たらないので不思議な読中感を覚える。しかし読後の虚無感(虚しいけどもキモチイイ)はやはり町田作品以外のナニモノでもなく、唯一。

むかーし初めてこの人の作品を読んだときには"句読点の少ない勢いのある文体でオモロ!"ぐらいにしか思わなかったんだけど、今にして見ればなんと浅薄だったことか。言語感覚/世界観ともに強烈な無二性を放つトンデモな御人。初めて読む人には、『告白』ではなく今作から入ることをオススメします。なんちて。
| かっつん | 21:41 | comments(3) | trackbacks(1) | pookmark |
Comment

拝啓

いいですね〜。

町田康は以前からわたくしのアンテナに引っかかってはいるのですが、
なにやら手を出しづらく、未読状態です。
御説に従い、本書から体験することにしたいと思います。
(これも「ラギッドガール」も基本、文庫待ちですが。)

いつもながら「この本を読んでみたい!!!」と思わせる感想文、見事でございました。

敬具


Posted by: |at: 2008/07/09 9:04 PM
バンキューさん

音楽にしてもそうですが、自分が書いた感想を見てその作品に興味を持ってくれる人が居る!ってのは凄く嬉しいです。
後で『騙された!』とか言われる可能性もありますが。笑

町田康は『合わん』って人も多いみたいでオススメし難かったりするんですが、
ノレた際のドライブ感は凄まじいものがありますので是非!
Posted by: かっつん |at: 2008/07/10 9:48 PM
はじめまして。突然のコメントで誠に恐れ入ります。
 私は、「ガメラ医師のBlog」管理人のガメラ医師と申します。映画ガメラに関する情報収集Blogを更新しており、こちらの記事にはギャオスのBlog検索から参りました。
 拙Blogではこの度、ガメラ関連記事の一環として上記の「ギャオスの話」書評をまとめ、7月12日付けの更新、
ガメラ:町田康氏の文庫新刊に「ギャオスの話」 2008/07 
http://blog.goo.ne.jp/gameraishi/e/f8f32638530a23f785dfead778c46862
中にてこちらの記事をご紹介させて頂きましたので、ご挨拶に参上した次第です。差し支えなければ拙Blogもご笑覧頂ければ幸いです。
 長文ご無礼致しました。それではこれにて失礼します。
Posted by: ガメラ医師 |at: 2008/07/12 6:39 PM








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町田康 氏の短編集『浄土』文庫版が、2008年6月13日に講談社より発売されました。 (講談社の紹介はこちら。) http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=276080 (Amazon.co.jpの当該分はこちら。)  収録作品は『犬死』『どぶさらえ』『あぱぱ踊り』『本音
ガメラ医師のBlog | at: 2008/07/12 6:09 PM

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