恒川光太郎/夜市
2008.07.07 Monday | category:本
何処かで、人知れず、開催される市がある
宵闇に、学校蝙蝠が来るべき夜市を告げている
そこには素晴らしい品物が並ぶという・・・
かつて裕司はそこであるものを売った
それは彼だけの記憶に留め置かれた遠い遠い昔の出来事・・・
大気がざわめき、風に悲鳴や笑い声が混じりだす
第12回日本ホラー小説大賞受賞作。豊かな叙情性、ノスタルジックな感情を喚起せずにはいられない世界/異界。ホラーというよりも、多くの戒めを孕んだ昔噺を聴いているような読中感覚。禁忌的なモノに触れる慄きや、同時に未知を拓く昂揚が充ちている。一切の余剰を廃し、丁寧に紡がれる言葉の磁力はとてつもなく高く、読み手を軽々と異界の空気へと嵌め込んでいく。独特の世界観/その構築力ともに素晴らしいの一言。ラストに至るまで、息つく間もなく流れていく。
併録の『風の古道』にしてもそれは全く同じ。部分部分で先の『夜市』ともリンクしながら、こちらもやはり心の原風景とも言うべき、郷愁を擽る独自の世界を描いている。怖いというより物悲しい、しかし全体に緩やかな昂揚感を湛えるという不思議な作風。ベタな例で申し訳ないが、宮崎アニメに通じる世界を感じた。他に類を見ないタイプの素晴らしい作品。各所での絶賛がそれを物語っている。
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