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いのちの食べかた -OUR DAILY BREAD- @梅田ガーデンシネマ



観るなら劇場スクリーンで、と思っていた作品。身近な〈食〉の背後にある〈生産〉の現場を照らしたドイツ/オーストリア合作のドキュメンタリー。恐らくは邦題が〈いのちのた食べかた〉でなく、〈生命の食べ方〉と付くような作風であったなら激しくつまらないものになってたと思うが、今作にはそうした押しつけがましい観念の提示は一切無かった。そこが良かった。

だから個人的には、これを観てことさら牛や豚や鶏の屠殺シーンだけを選り抜いた挙句、"私たち人間存在というものの業"なんてことを語り出すような人間は絶対信用しない。だって現に食ってるわけだし。もう少し具体に言うなら、同じく大量にコンベア上を流れていく林檎や、奇っ怪なマシンで木から叩き落される無数のオリーブはスルーしつつ、整然と分解されていく牛や豚や鶏に対してだけ過剰に反応するような意識の持ち方は、ただの偽善だということ。






先に書いてるとおり、作品はそこだけを際立たせるような作り方はしていない。各シーンのコントラストは極めて均等。ナレーションも字幕も無く、映像とその音だけで場面が綴られていく。それはそのまま、監督のニコラウス・ゲイハルターの「現代の食糧生産事情を多くの人に知って欲しい」という言葉を体現している。唯一作り手の意図が入り込んでいそうなところと言えば、それぞれの〈食〉の生産工程に続いて、その従事者が食事を取るシーンが挟み込まれているところ。この意味するところのメッセージ性は(有るのか無いのかも含めて)解らなかったけど、事象として共通してたのは、皆一様に自分が食べてるものに対して特別な意識を持ってるようには見えなかったこと。必要だから食べるわけで、それを自らの労働たる〈生産の現場〉と結びつける意味が無いのはいわば当たり前のことだと思うんだが、これも先のオカシナ観念論の持ち主に言わせると、きわめて"冷血"で"非人間的"、"許されざるべき"所作だと写るらしい・・・。こうなるともう逆に差別的で、わけがわからないんだが。





と、無駄に長くなってしまったが、この辺実は余談。何が良かったかって、その被写体として映しだされる事物の集合美。その映像を同じドイツの写真家/Andreas Gurskyと並べて書いてる人がいたが、確かに通じるところも。構成物が単体での意味を喪失してしまうまでに巨大な集合図は、圧巻。身近な食材の背後に在る全く身近でない生産の光景は、その圧倒的な規模もあってかほとんどスペクタクル絵巻のごとく。農耕をアートだ!と思ったことはこれまで多分無かったが、劇中で切り撮られる各シーンは、アホな言い方になるが少なかからず芸術的な様相を呈していた。

徹底してシンメトリックに捉えられる巨大な施設、果ての見えない大地で繰り広げられる収穫の景色。その中で稼動する超級の重機は徹底した効率化を施され、完璧に近いモーションで目的を遂げていく。機械だけでない。そこに働く人間もまた同様に整然と、無駄のない動作を繰り返す。どこにも無駄のない(ように見える)巨大なモノの姿態は、まるで身近な食材とはリンクしない見たことのない世界を形成している。

たぶん、この映画を観て何かを食べるのをやめようと思う人は少ないのではないだろうか。上述のように、監督はこれで何かを告発するわけではなく、分かりやすい善悪の図式に当てはめようとするわけでもない。ただ「現代の食糧生産事情を多くの人に知って欲しい」というそれだけ。同時に、知るということはそれだけで非常に大きな意味を持っている、ということがはっきり伝わってくる作品でもあった。

http://www.espace-sarou.co.jp/inochi/
| かっつん | 21:56 | comments(0) | trackbacks(1) | pookmark |
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いのちの食べかた原題:OUR DAILY BREADを見てきた。最近まれに見るすばらしいドキュメンタリーだ。ぜひ多くの人達に見てもらいたい。
札幌生活 | at: 2008/04/10 5:44 PM

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