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才能×環境×努力


7月29日月曜日。就寝前の時間を使ってこの2週間ほどで読了した"デイヴィッド・エプスタイン/スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?"。物凄くざっくり内容をまとめると、ある特定の競技において超一流となる選手には、そのパフォーマンスを決定づけるような形質(スポーツ遺伝子)が生まれながらに備わっているのか?という疑問に対する検証。


今から10年ほど前にベストセラーとなった"マルコム・グラッドウェル/天才!成功する人々の法則(原題:outliers)"において紹介され有名になった「1万時間の法則」(後述)への反証的な部分も多くで見られるが、本書の結論としては『そうした遺伝子の組み合わせは存在する可能性が高いが、現代の科学ではそれ(の組み合わせ)を特定することは不可能。ある分野で超一流となるためには、資質と環境と努力のどれもが必要』という、ある意味当たり前の結論でまとめられている。


『1万時間の法則』は、特定の分野で一流になるために必要な練習時間であるとされ、転じて誰でも1万時間のトレーニングを積めばどんなジャンルであっても一流の技能が身につけられる、という趣旨で広く有名になったもの。ただしこれは、outliersの著者マルコム・グラッドウェルが、そもそもの研究を行ったK.アンダース・エリクソン氏の提唱をやや歪曲するような形で紹介したことによる誤ったものだという認識が今では一般的なようである。


現代のマラソンシーンにおいて圧倒的な強さを示すケニア勢(中でもケニアにおいて人口的には %程度のカロンジン族がその大多数を占めていると本書は指摘)に顕著なように、ある特定のスポーツにおいて生まれながらの資質を示す者がいるのは確か。しかし視点を変えて見れば、単なる身体的な特徴(腰幅が狭く、脚が長く下腿は細い=ランニングエコノミーに優れる)以上に、エリートマラソンランナーを生み出す環境的な要因がある(幼少期より長距離を歩いたり走ったりして移動することが多い、優秀なランナーを選抜する仕組みが構築されている、走ることを手段として立身出世するモチベーションが高いetc.)とも言える。そうして資質を持った者たちの中で非常に高いレベルの競争が行われ、そこから世界トップクラスのランナーが輩出されてくる。つまりは才能×環境×努力のいずれもが、欠くことのできない要素として在るということだろうか。


たとえば今年のツール・ド・フランスで総合優勝し、史上最年少マイヨ・ジョーヌとなったEgan Bernalはコロンビアの出身だが、今年のツールに出場していたコロンビア人選手はわずかに5人(全196人中)であった。そしてそのうちの3名(ベルナル、ランダ、キンタナ)が総合トップ10に入っているという、数字的に見れば驚異的な結果が出ている。こうして見るとおそらくコロンビアには第2、第3のベルナルとなりうる可能性を秘めた人間が少なからずいるのだろうと容易に想像できるけど、こと機材スポーツでもあるロードレースにおいて、経済的な事情から一生自転車に乗ることなく、その才能が開花するチャンスもないままに終わってしまう者が無数にいる(いた)のだろうなとも想像できる。しかし今後は、今回大きな偉業を成し遂げたベルナルという王者の誕生によって、国内外の自転車関係者からコロンビアに注がれる視線はより強いものになるだろうし、競技人口もさらに増え、その中から才能に努力を重ねた人間がそのチャンスを掴む機会も格段に増加していくのかもしれない。


なんだか少し話が逸れてしまったけれども、仮に超一流を目指すのなら、自分が最も適正を示す分野を見つけ(ちなみに本書の中で著者のエプスタインは、幼少期に特定の競技に絞込んでしまう弊害を繰り返し記述している)、そこで可能な限り質の高いトレーニングを積んでいくというのが結局は一番の近道なのだ。その一方でスポーツというのは、自分なりの目標やゴール、楽しみ方を見出せるところが素晴らしいのだと思う。そんなことを改めて感じさせてくれた、本書にて印象的だった記述を紹介して終わろうと思う。

 

2時間10分で走るためには遺伝的な資質が必要なので気にかけることはないが、誰でもマラソンを完走することはできる。そのトレーニングがランニングであれ、野球やクリケット、テニスのような高度な運動技能を必要とするスポーツであれ、トレーニング計画という、みずからの生物学的探究に出かけたことのない人は、すばらしい自己変革の機会を逃している。

 

人は誰も、運動やトレーニングを通してその人ぞれぞれに益するところがあるものだ。始めてみることは、最先端の科学でさえなしえない自己発見の旅へ出かけることなのである。

 

ハッピートレーニング!

| かっつん | 21:10 | comments(0) | - | pookmark |
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