Entry: main  << >>
古川日出男/gift


『僕たちは歩かない』あたりから離れてしまっていた古川作品。今回まだ未読だった『gift』が文庫化されたので久しぶりに読んでみた。

文庫版に向け書き下ろされた1編を含む、全20の短編集。『古川日出男=世界の捏造』という独自式が頭にこびり付いちゃうぐらい、"ホントウのようなセカイ"を鮮やかに構築するそのスタイルは、斬新でとても強い印象を残す。日常から半歩ずれた(と錯覚させるが実はあり得ないレベルで)非日常的な設定が次々に繰り出され転回し、頭で理解する前に強烈な残像を残し消え去っていくようなお話の連続。

向井秀徳の即興ギターに乗せ朗読する古川日出男を見た時はさすがに引いたが、この人は恐らく自分のことがかなり好きで、自らの文章に酔ってるような匂いも少なからず有る。なので、部分部分の字面をパッと見ると、けっこうクサイところがある。けれどもその「クサさ」が小説において決して悪い向きに作用しないのは、言葉を操る圧倒的な力量は勿論として、それが可能にする"物語る作者の視点に読み手を同化させる"構造の巧みさに因るのかもしれん。極私的に閉じられた小さな虚構の物語、そこに読み手をリンクさせた瞬間に、全ての嘘は嘘で無くなり、作者の陶酔が即ち読み手のキモチ良さに変化する。

文字で溺死させる作家、とはよく言ったもので、部分部分だけ見れば結構恥ずかしいはずの言葉たちが、全体では読者を淫するに充分なパーツとして機能する。この人の作品を読んでる間の何とも言えん没入感(と恍惚感)は、少なからずこの小説世界への自己同化から来てるんだろうなー。とは言えこれは20代の現在の自分の感覚であって、例えば50代のオッチャンが読んで同じように自己同化出来るか?と考えると正直よくワカランけど。




シェルターのなかで、ライナーノーツを読み進めながら、あらゆる音楽を耳は幻聴として捉えた。全身の皮膚を虫が螫し、灼けすぎた首筋は剥がれた。肋骨が浮きでる程度に体重は減ったが、まだ生きている。きょうは生きる。
〈僕は音楽を聴きながら死ぬ〉


| かっつん | 19:45 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
Comment








Trackback

Search

管理人運営の音楽サイト

Winterlight
ポストロックを中心に紹介。 轟音・サイケ・シューゲイザーからUK/USインディーまで この辺の音が好きな人は覗いてみてください

ブログランキング参加中

ブログランキング・にほんブログ村へ



Entry

     

Category

Archives

Calendar

      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>

Profile

Comment

Trackback

Others

無料ブログ作成サービス JUGEM

Mobile

qrcode