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NOVA 2---書き下ろし日本SFコレクション


大森望監修の書き下ろしSFアンソロジー。2009年12月の第1弾から時を待たず、早いペースで刊行された第2弾。今回の寄稿者は以下12名。個人的にはほとんどハズレがなかった前作と対照的に、今回は残念ながらアタリが非常に少なかった。というわけで何かしら惹かれるところがあった作品の感想のみを以下に。

最大のお目当てはやはり津原泰水『五色の舟』
戦時下の日本を舞台に、各地を移動し興行する"見世物小屋"のモノたち(フリークス)の視点である日々が描かれる。彼・彼女らは総じて"異形"の持ち主であるのだけど、紙面からは悲壮感や絶望感といった強い感情は付随せず、悪くない倦怠感にも似た平穏さが印象的。ひどく人間的な機微を感じさせる化け物"くだん"と、分別ある語り口の下に細やかな感性を感じさせる畸形の"僕"、対照的にきわめて機械的な枠組みの中に統一され、一個のパーソナリティを感じさせない軍隊とが終局でメルトし、引き起こされるちょっとした恐慌のサマがなんともいえないニュアンスを生んでいる。

続いて好みだったのが恩田睦『東京の日記』
近未来のようでも過去のようでもある東京を舞台に、そこに滞在した外国人の手記の形で進む淡々とした物語。戒厳令下の東京、ながら、妙に他人事めいた緊張感のなさが不思議な空気を醸している。背後では何かが確実に起きているようであり、具体的には何も起こらない「日常」の描写の緩やかさに、ザワザワとした昂揚を感じた。

殺戮と暴力が跋扈し、通俗的なエンタメ性が高かったのが曽根圭介『衝突』で、これまた人間よりも感受性豊かなロボットが携わる形の終末的な群像劇に、なんともいやーな読後感に襲われた。読中読後の厭感、という意味では宮部みゆきの『聖痕』が断トツで、児童虐待という物凄く現実的で生々しい要素を、神だメシアだ預言者だといった超常的な事象を介入させることでドス黒い絶望感をいや増す手法、この救いの無さは、なんなんだろう。宮部みゆき作品はほんと久しぶりに読んだけど、昔日に覚えた上記のような感覚がまざまざと思い起こされましたわ。

面白かったものは以上かな。東浩紀『クリュセの魚』の静かで甘美な叙情性/センチメンタリズムや、短編ゆえにその幻想的な光景の空気を密に感じた西崎憲『行列(プロセッション)』も良かった。ただ最初に書いたように、今回大半の作品は、個人的な好みからは外れていた。表面的には一風変わったクセがあるんだが、何かこう、新しい感覚を刺激されるところが無いというか。とはいえ、異形コレクション同様、こうした書き下ろしアンソロジーがどんどん出回るのは凄く嬉しいけど。



『NOVA 1』の感想は⇒コチラ

| かっつん | 23:33 | comments(0) | - | pookmark |
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