6月に鑑賞した「ベルギー奇想の系譜展@兵庫県立美術館」がきっかけで、それまで農民画家という認識でしか知らなかったブリューゲルの別面での魅力を知ったワタクシめ。ちょうどその直後に↑のキャッチーなチラシと共に本展示のことを知ったのでした。そうして会期終了1週間前となる昨日、ようやく観に行くことが出来た次第。
しかしながらまったくリサーチせずに出かけたところ、開館10分前に到着すると、既に入館待ちの長蛇の列が・・・まさかこんなに凄い人出だとは思っていなかったため、一瞬帰りたくなったり。。美術鑑賞のためにこれだけ並んだのって、記憶にあるのは10年前に相国寺であった伊藤若冲の展示以来。当然のように前売り券も買っていなかったため、入館してからまたそれを買うために並び、結局展示室に入るまで15分以上が経過。ただ、後から調べるとこんなのはまだマシなほうだったようで、場合によってはもっと凄まじい混み具合だったりするのだとか。
さておき、肝心の企画展のほうはと言うと、入室するとまずは16世紀のネーデルラントの彫刻作品が、続いてフランドル地方の宗教絵画、そしてヒエロニムス・ボスおよびそれに追随する画家たちが描いたグロテスクかつユーモラスな異形のモノたちが跋扈する奇想の作品群、さらにはその流れを汲んで展開されるブリューゲルの版画を始めとする作品が展示され、ラストにメインの「バベルの塔」が登場するという構成。ブリューゲル作品の一部は、先の県美での展示作品と被っているものもあったけど、やはりこの人が描く奇怪なイキモノたちの姿態やその蠢くサマは見れば見るほどに面白く、魅力的。惜しむらくは、いずれもそうした細部にこそ魅力が宿る作品(キャンバスそのものも小ぶりだし)にも関わらず、作品と鑑賞者を隔てる鉄柵が必要以上に広くとられているため、もっと近寄って観たい!!というフラストレーションをそれなりに感じた。これはとっても残念だった。
そしてメインとなるピーター・ブリューゲル1世作の「バベルの塔(小バベル)」については、鑑賞するために10分ほど並び、作品の前に立ち止まることが許されないため、鑑賞時間は1分に満たないという状態。旧約聖書に登場し、ヒトが神へと近づかんとして建造したと記される巨大建造物の細部や、その塔の中で生きとし生ける無数の人たち(わずか新聞紙を広げたサイズのキャンバス内に1,400人が描き込まれているらしい!)の様子など、超細密に描き込まれたその細部にこそ正しく神が宿る作品なだけに、この鑑賞形態だと全く持って物足りない、、、という感想。それもあってか、事前に見知っていた作品の表層やディテールを打ち破ってなお衝撃をもたらすような、本物の作品を目の当たりにした時ならではの昂揚といった感覚は弱かった。
総括してみると、やや扇情的で大々的な広報に比して、展示の実際としてはややアッサリした内容だったなという印象。世界にも25点しか存在せず、かつ今回が初来日となったヒエロニムス・ボスの油彩2点が観られたという点だけでもかなり価値があったとは思うけど、それにしたって「バベル」一点押しな感が強いコマーシャルの中ではおざなり感のある扱いで(いちおう副題にはなってるが)、なんだか勿体ないなーと思ったり。結果的にはこれだけたくさんの来場者を集めているわけで、あのバベルのキャッチーな要素を上手いこと使ってやったなーとは思いつつ、あの大々的な広報にかける予算や時間をもう少しだけ企画展示の内容そのものに傾けて欲しかったなという風にも感じた。自分のように美術に疎い人間にとっては、会場で丁寧にその作品の魅力が掘り下げられた形で(それは必ずしも細かな解説が必要ということではなく、展示の並びや全体における位置づけなどによってその本質的な魅力を浮かび上がらせるということも含めて)それまで知らなかった画家や作品に「出会える」ことが大きな喜びだったりするので。
今回の企画展に合わせて大友克洋氏が手掛けた「INSIDE BABEL」の原画2枚は、美術館へ入館してすぐのフロアに展示。こちらは企画展のチケットを買わずとも鑑賞できる。作成にまつわるショートフィルムと共にかなり見応えのある作品。惜しむらくはこちらも設置場所が太陽光がモロに反射するフロアという環境で、背景の映り込みなどが発生して観難いったらない、という感じ。もう少し考えてほしいなーとこちらでも思ったのでした。
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